今月のびっくりどっきりCD
(2004.7.31.)


ヨアヒム・ラフ Joachim Raff(1822-1882)

交響曲 第7番 変ロ長調 op.201 ≪アルプスにて≫
歓呼序曲(ジュビリー・オーヴァチュア) op.103

ウェルナー・アンドレアス・アルベルト/フィルハーモニア・フンガリカ
(独CPO 999 289-2)

涼しげなナチュラル系交響曲をどうぞ
ラフリストに才能を見出され、新ドイツ楽派の一人として活動したスイス生まれのドイツの作曲家。非常な多作家だが、リストのような 際立つ作風ではないためか、ベートーヴェンやシューマン、メンデルスゾーン亡き後ブラームスが現れるまでの主要な交響曲作家であったにも関わらず、 今では室内楽の小品以外はほとんど忘れられた存在になっている。丁度マーラーとシェーンベルクの間に位置するツェムリンスキーのようなものだろうか。 しかしリストの交響詩の何曲かはラフがオーケストレーションしているといわれるだけあって交響曲や管弦楽曲は実に気持ちのいい響きがする。

11曲ある交響曲のうち、1875年に書かれた全曲50分の≪第7番・アルプスにて≫はラフの故郷へのオマージュ。ベートーヴェンの≪第6番・田園≫や メンデルスゾーンの≪第4番・イタリア≫、シューマンの≪第3番・ライン≫などに通ずる美しい音のスケッチブックだ。コンセプトとしてはリストの交響詩に 類似する標題音楽で各楽章にタイトルが付されている。
第1楽章は「高山のハイキング」。管弦楽の全奏による「アルプスの主題」で眼前に壮大な景観が提示され、やがてのんびりと周りの風景を楽しみながら 山頂を目指す様子が描かれる。後半は「アルプスの主題」がカノン風に反復されて盛り上がる。第2楽章は「宿屋にて」。民族舞曲風の朗らかなスケルツォ。
第3楽章は「湖畔にて」。高原の大きな湖の水面を渡る風や遥か遠くの峰の連なりを見渡すような平安で敬虔な祈りすら感じさせる。後半は静かに高揚し、 切れ目無く第4楽章「シュヴィングフェスト」に入る。シュヴィングフェストとは相撲やレスリングに似たスイスの国技の試合。 音楽としては観戦する人々で賑わう会場の様子という感じ。明朗な行進曲風の主題が展開するロンド形式だが、フレーズの締めくくりでドヴォルザークの≪第6番≫ (ラフのこの曲の5年後に書かれた)の終楽章とそっくりな部分が出てくる。続くコーダは「お別れ」。ちょっとしんみりした後ろ髪引かれるような曲調になるが すぐに元気を取り戻して、第1楽章の「アルプスの主題」が回帰して終結する。

R.シュトラウスの≪アルプス交響曲≫のような驚異的な細密描写も無いし登山者の心理描写をしているわけでもない、至って健康的な音楽なので いちいち精神性を云々するような人にはハナシにならないが、なにか元気な曲が聴きたいなーという人にはお薦め。
余白の序曲はイギリスの国歌でもある「ゴッド・セイヴ・ザ・キング」のメロディを基にした華やかな曲。それ以外何も無いといえばそれまでだが。

ちなみCPOレーベルは通常、量販店で2400円前後なのだが、この盤はなぜかスペシャルプライスで1500円前後で買える。普通の人にとって正体不明の曲だけに ちょっとした冒険にはうれしい価格かもしれない。


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2004.Same.,Fancy Free