今月のびっくりどっきりCD
(2003.12.24.)

ロベルト・シューマン
Robert Schumann(1810-1856)
チェロ協奏曲 イ短調 op.129
ヴァイオリン協奏曲 ニ短調


ユリウス・ベルガー(Vc),
ハンスハインツ・シェーネベルガー(Vn),
フローリアン・メルツ/南ウェストフェリア・フィルハーモニー管弦楽団
(独ebs-records ebs6090)


メルツ

気の狂った曲に立ち向かう気の狂った演奏
別に新譜ではなかったのだが今までどういうわけか手に入らなかったし、実際聴いてみたら予想を遥かに超えた壮絶な内容なので紹介。 いやもう凄いって。笑いが止まりません。

この2曲はシューマンの晩年、気が狂ってたか狂ってないかという瀬戸際の時期に書かれたもの。≪チェロ協奏曲≫の方はほの暗いロマンの香り漂う渋めの 名曲として知られ、世の中のチェロ奏者の基本レパートリーにされている。悲哀を帯びてあてもなく千鳥足で彷徨うようなチェロに、くすんではっきりしない 呟くようなオーケストラの伴奏が絡んでいく第1楽章は妖しさ爆発。サスペンス劇やSMビデオ(もちろん和モノで)のBGMに良さそうだ。 ≪ヴァイオリン協奏曲≫はシューマンの作品の中では最もマイナーなものの一つ。作品番号がついていないのはシューマンの死後80年以上経って 発見されたから。曲はわけのわからない繰り返しやソロを無視してオケが勝手に盛り上がったり、もう支離滅裂。マーラーの中期の交響曲を先取りしたかの ような大混乱の音世界。絶望的な精神状態でそれでも創作の手を止めないとかくも凄絶なモノが生まれてしまうのか。

ところでこのCDを取り上げたのは曲が壮絶だからというだけではない。演奏がそれに輪をかけて滅茶苦茶だから(いい意味で)。 指揮のメルツはこの盤の前に出したシューマンの交響曲全集(ebs 6088)も大暴れだった。古楽器奏法のように鋭い響きの弦、時々音が割れんばかりに炸裂する金管、 親の仇のごとく強打されるティンパニなど、とんでもなく大胆な表現だったが今回もやってくれてました。 ≪チェロ協奏曲≫には、ショスタコーヴィチがオーケストレーションを強化した版もあるのだが(割とお薦め)、この演奏の前では無用のものに思えてくる。 近現代作品を主要レパートリーにしているベルガーのソロは曲のロマン性よりも先進性を重視した表現で、なんだかヒンデミットかプロコフィエフでも 聴いているような錯覚を起こさせる。≪ヴァイオリン協奏曲≫は嵐のような第1楽章も凄いが、気持ち悪いワルツ風の第3楽章を通常の演奏よりも遅いテンポを 取ることで『地獄の淵に佇んでるのになんだかハッピー』って感じのこの曲の毒を引き出していてグッジョブ。ソロ担当のシェーネベルガーアイヴズの ソナタなんか録音するくらいだから多分変なヒトなんだろう(笑)。


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