今月のびっくりどっきりCD
(2004.10.6.)

ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
Pyotr Ilyich Tchaikovsky(1840-1893)

交響曲 第1番 ト短調 op.13 ≪冬の日の幻想≫
付随音楽 ≪雪娘≫ op.12(抜粋、4曲)
幻想序曲 ≪ロメオとジュリエット≫

ネーメ・ヤルヴィ/エーテボリ交響楽団
(スウェーデンBIS SACD-1398)※SACDハイブリッド盤

速っ!
≪白鳥の湖≫を書く前の若い頃のチャイコフスキー(とはいえ全く別の職業から作曲家に転身したのでそんなに若いわけではないが)の秀作三題を収めたCD。 チャイコフスキーの交響曲といえば≪第4番≫≪第5番≫≪第6番・悲愴≫の3曲が名作とされているが、この≪第1番≫や番外の≪マンフレッド交響曲≫も なかなかいい曲だと思う。

2人の息子は指揮者、娘もフルート奏者という音楽一家の長であるネーメ・ヤルヴィはエストニア出身で現在はデトロイト交響楽団の音楽監督。カラヤンも 真っ青の録音量を誇るが、さらに凄いのはシベリウス、ニールセン、グリーグ、ドヴォルザーク、ショスタコーヴィチ、プロコフィエフ、グラズノフ等々の 北欧やスラヴ系の作曲家のオーケストラ曲をことごとく録音し、さらにブラームスやR.シュトラウス等のドイツものやルーセルやラヴェルといったフランスもの、 さらにアメリカ音楽にも手を付ける驚異的なレパートリーの広さ。かつてベートーヴェンやシューベルト、ブラームス、ブルックナー、マーラーの交響曲全集を 次々に完成させたハイティンクが「全集魔」と呼ばれたが、ヤルヴィはさらにその上を行く「全集魔王」だ。ところがその「魔王」が得意のはずのチャイコフスキーの 交響曲を全く録音していなかったのは不思議(真作とはいえない≪第7番≫は録音していた)。今回ついにチャイコフスキーの交響曲全集に着手し、 まず≪第6番・悲愴≫をリリース、この≪第1番≫は第2弾ということになる。

ヤルヴィの指揮の特徴は「ぶっきらぼう」。余計な思い入れをせずに作品が本来持っている「力」に任せて淡々と進めるが、ここぞという場面で急にデフォルメを かけて聴く耳をそばだたせてくれる。この≪交響曲第1番≫の演奏もかなりの快速調で、他の指揮者が全曲45分くらいかけているところをヤルヴィはなんと40分弱。 ヤルヴィが長年音楽監督を務めていたスウェーデンの代表的オーケストラであるエーテボリ交響楽団は、欧米のそれとは違ってマッシーヴなパワーもコクも無いが 軽やかで透き通った響きが特徴。第1楽章は吹雪の中をそりが疾走しているような音楽だが、これが結構快い。第2楽章の木管の詩情溢れる響きや、第3楽章 (中間部は実質ワルツ)の優雅さも過不足無い表現。しかし凄いのは終楽章で、他の指揮者が必ずテンポを落とす(弦が合わせ難い)中間部のフガートも もの凄い速さで駆け抜けてしまう。しかし今度はコーダ直前でばったりテンポを落として冷ややかな浮遊感を出したりと一筋縄ではいかない。

併録の≪雪娘≫はおなじみのロシアの民話を基にした戯曲のための伴奏音楽。ヤルヴィは既に全19曲を録音しているが、今回はその中から序曲を含めて楽しそうな曲が 選ばれている。すでに≪白鳥の湖≫の片鱗が見え隠れしているのが興味深い。≪ロメオとジュリエット≫は初期の名作。序曲と名付けられているが実態は交響詩。


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2004.Same.,Fancy Free