今月のびっくりどっきりCD
(2008.3.14.)


パウル・ヒンデミット Paul Hindemith(1895-1963)
弦楽と金管のための協奏音楽 op.50
リヒャルト・シュトラウス Richard Strauss(1864-1949)
4つの最後の歌 *
ヨハネス・ブラームス Johannes Brahms(1833-1897)
交響曲 第1番 ハ短調 op.68

ルチア・ポップ(ソプラノ)*
カルロ・マリア・ジュリーニ/ロサンゼルス・フィルハーモニック
※1981.11.6.ロサンゼルス、ドロシー・チャンドラー・パヴィリオン、LIVE
(米 Harvest Classics HC0633)2枚組CD-R



エドワード・エルガー Edward Elgar(1857-1934)
序曲“コケイン”(ロンドンの街にて) op.40
レイフ・ヴォーン・ウィリアムズ Ralph Vaughan Williams(1872-1958)
2台のピアノのための協奏曲 ハ長調 *
ウィリアム・ウォルトン William Walton(1902-1983)
交響曲 第1番 変ロ短調

ヤアラ・タール&アンドレアス・グロートホイゼン(ピアノ)*
ロジャー・ノリントン/ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団
※2007.10.26.ライプツィヒ、ゲヴァントハウス、LIVE
(米 Harvest Classics HC06136)2枚組CD-R


 べ、別に「買え」なんて言ってるわけじゃないんだからね!
 Harvest Classics はアメリカの好事家が自主的に製作している所謂ブートレグで、音源はエアチェック・テープやサウンドボード録音、演奏会場での隠し録り(薄笑)など様々。しかし使用するソースが余程コンディションがいいらしく、従来の他のブートレグのレーベルに比べてかなり音質が良く、余計なノイズリダクションもイコライジングもしていないので、ライヴの生々しさがダイレクトに伝わってくる。収録内容は大部分が一昔前のものだが最近のものである場合もあり、著名な演奏家の未だ録音の無いレパートリーが聴けたりするし、ほとんどのタイトルが一晩のコンサートの演目を丸ごと収録しているのが嬉しい。パッケージデザインは画一的なものだが一部のレーベルのように悪趣味でもないし安っぽくもなく、見易くトラック表示やデータもきちんとしていて製作者側の誠意を感じる(ブートレグをリリースする事自体に誠意があるかどうかは置いておいて)。
 実はこのレーベル、4月頃に活動を停止してしまうらしく今年も半ばを過ぎると市場から消えてしまう可能性が高いようだ。今後、どこかのレーベル(それもブートレグだが)で再発売される可能性もあるが音質は保障のしようがない(コピーのコピーだったりするので)。何しろブートレグなので販売促進は憚られますが(以前のスヴェトラーノフのもそうでした)、「こんなのもあるぞ」ということで(実際はそれ以上の価値がある気がするが)、ここ最近自分が聴いて大いに感服した2タイトルを紹介。

 1組目は今は亡き名匠ジュリーニのロサンゼルス・フィル常任時代のライヴ。前半の2作品がジュリーニとしてはかなり珍しいレパートリーで、ヒンデミットはBBC音源のものが正規盤として1種出ているだけ、R.シュトラウスの方は正規録音が無いばかりか演奏会での記録もこれきりではないかと思われる貴重なもの。さて、ドライな音作り&旋律美からは縁遠そうなしんねりむっつりしたヒンデミットの曲もジュリーニが持ち前のカンタービレを効かせてしなやかに弦を歌わせ、ブラスがアメリカのオケらしく朗々と響かせれば、あらビックリ、なんとも楽しげな音楽に化けることか。
 続くR.シュトラウスの独唱はこの作曲家のオペラや歌曲を得意とする(これも今は亡き)ルチア・ポップ。この盤が三種類目(プレヴィン&ウィーン・フィルのものがCD化されていれば四種類目)となるが正規盤二種(EMI,SONY)に勝らずとも劣らずの歌唱。ジュリーニの伴奏も悪いはずがなく、特に第3曲のヴァイオリン・ソロや第4曲後奏のまるでマーラーの『9番』か『大地の歌』でも聴いているような寂寥感が素晴らしい。
 後半は同時期にグラモフォンに録音を残しているブラームスの交響曲第1番。かなり遅めのテンポながらオケをたっぷりと鳴らし歌心にあふれた見事な演奏はグラモフォン盤と同等だが、ライヴでの「覇気」という点でこの盤は一聴の価値はある(尚、グラモフォン盤で実行されていた第1楽章の反復は省略されている)。

 2組目は2007年秋の録音。ノリントンがなんとゲヴァントハウスのオケを振って、しかもオール英国物という凄い内容。前半では連弾のエキスパートであるタール&グロートホイゼン(SONYの『シューベルト連弾曲全集』が凄いぞ)が今までの録音暦からは予想外のヴォーン・ウィリアムズを弾いているのも目玉。
 このヴォーン・ウィリアムズの協奏曲は元来ソロ・パートはピアノ1台用だったが、超絶的な難しさにほとんどのピアニストが降参してしまったのでやむなく2台用に振り分けて書き直したとかいうほどの代物なのだが、しかし二人がかりでもしんどそうである(というか音多くなってないか?)。
 この痛快な演奏の前に2006年にはN響に客演した時にも溌剌とした演奏を聴かせてくれたエルガーの“コケイン”が置かれているが、このCDではN響の時には省略されたオルガン・パートも演奏され一層壮大に締めくくられている。ゲヴァントハウスのオケも弦のヴィヴラートを極力抑えて頑張る。
 そして後半はまだノリントンが録音していないウォルトンの交響曲第1番。現在の地元であるシュトゥットガルトでは何度か演奏されているという情報は聞こえてくるものの、実音は聴けずじまいだったのでこのCDの登場は嬉しい。それにしてもヴィヴラートを抑えた弦が近現代の作品にここまで効果的とは思ってもみなかった。ウォルトンの音楽の持つ辛辣な部分が露わになり、ただのカッコいい音楽では終わらず、作曲当時の不穏な世界状況も想い起こさずにはいられない、という思いの外深い表現を聴くこととなった。ますます正規録音が待望されるところだ。

 ・・・そういうわけで気になる人は秋葉原のIとか吉祥寺のDとか名古屋のCとかへどうぞ。便宜上強くは薦めません。個人的にはお買い得でしたが。でもなー。変な市販CD買うよりなー。どうかなー。人それぞれだなー。いやー・・・・・・うーん・・・・・・うーん・・・・・・。

※ Havest Classics は既に活動を停止しています。以降の入手はほぼ困難です。(2008.7.26.)



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2008.Same.,Fancy Free