今月のびっくりどっきりCD
(2006.3.21.)

『ディープ・パープル/ロイヤル・フィルハーモニック・オーケストラ』

ジョン・ロード Jon Lord(1941- )
≪グループとオーケストラのための協奏曲≫

ジョン・ロード(ハモンドオルガン), リッチー・ブラックモア(リードギター)
ロジャー・グローヴァ
(ベースギター),イアン・ペイス(ドラムス)
イアン・ギリアン
(ヴォーカル)
マルコム・アーノルド/ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団
(ワーナーミュージック・ジャパン WPCR-12252)


ジョンとマルコムの合体技だ、だだっだー!
1970年、ロンドンでのライヴ録音。今回、イギリス盤LPのデザインを復刻した紙ジャケット仕様で再発売された。リマスタリングされているものの、 当時音響的には難があったことで知られるロイヤル・アルバート・ホールでの収録なので鮮明な音質というわけにはいかないが。

今でこそイングヴェイエリック・クラプトンの例で知られるポップスとクラシックの融合は、このディープ・パープルがおそらく最初の成功例だろう。 バンドそのものがオケと共演ということでは後にスコーピオンズも試みているものの、この場合バンド用のナンバーをオーケストラ編曲するというものではなく 新たに専用の曲を作り、それがロマン派の協奏曲並みの3楽章からなる大作(演奏時間54分)というところが凄い。しかもバンドを独奏楽器群に見立てたコンチェルト・ グロッソ(合奏協奏曲)の形になっているのも興味深い。つまり、演奏形態はロックバンドとオーケストラのハイブリッドであり、曲はロマン派とバロックの ハイブリッドであるわけだ。
作曲はジョン・ロードで、特にクレジットされていないが、オーケストラ部分の編曲は指揮をしているアーノルド(Malcolm Arnold,1921- )の担当だろう。 イギリス現代音楽の重鎮であるアーノルドは映画音楽(≪戦場にかける橋≫等)で有名だが、交響曲や様々な楽器のための協奏曲も数多く書いていて (ハーモニカ協奏曲もある)オケの鳴りっぷりには定評のある人で、この曲でも金管や打楽器のケレン味溢れる演出はさすがと思わせる。

第1楽章は古典〜ロマン派の協奏曲を同じく協奏風ソナタを模した構造。弦のトレモロに乗ってオーボエ・ソロが憂いを秘めた旋律を奏し、 続いてオーケストラによる長めの提示部が始まる。まるで英雄譚が始まりそうな楽想だが、やがて快活なテンポに転じて木管に弾むような旋律が現われると、 通常の協奏曲での第2提示部にあたる部分に入る。ここでバンドがオーケストラに喧嘩を売るように演奏を開始。冒頭の旋律を扱いつつも自由な変奏を展開する。 バンドがいい加減暴れたところで、金管に勇壮な旋律が現れて展開部に入ると大乱戦状態。オケが新しい主題を提示してもバンドは最初の主題を頑なに保持する。 ギターとドラムスがオケを圧倒せんばかりに ff を叩きつけるとオケは全休止し、リードギターの短いソロが入る。実はリッチー・ブラックモアはこの企画に ノリ気で無かったらしいが、そのせいか第1楽章では結構ダルな演奏をしている。この後、曲は再現部に入ってバンド、オケ共に自己主張しあってがぶり四つのまま終了。

第2楽章はおおまかにA-B-A'-B'-Cの形をとっていてBとB'にヴォーカルが入る。歌詞の内容は「自分探し」(えー)。 オケのみで奏されるほの暗いAのあとバンドが加わり(B)、続いてヴォーカルが滑り込む。A'に入るとオケの管楽器とバンドのドラムスの掛け合いにギターが 重なって聴き応えのあるブルースが流れていく。ここはまるでヴォーン・ウィリアムズの交響曲の緩徐楽章のようで、イギリスの音楽家の面目躍如といったところ。 再びヴォーカルが入り(B')オルガンの短いソロの後、弦楽だけが残り(C)静かに消えていく。

第3楽章はアーノルドらしい壮大な開始。打楽器と弦の戦闘的なリズムに乗って金管がワーグナー風の動機を断続的に響かせ、リッチーのソロがそれに続くが ここは相当カッコいい(やっとヤル気が出たらしいw)。この楽章でバンドは完全に協奏曲の独奏部として機能している。第1楽章では張り合っていたバンドと オケが第2楽章でヴォーカルを介して歩み寄り、とうとう一体化。マクロスかよ(笑)。中盤ではドラムスの長大かつ物凄いソロが入り、ソロの終わり近くから オケのティンパニも加わって最後のクライマックスに突入していく。コーダはカッコ良過ぎ。
ロイヤル・フィルはイギリスのオケの中では特に上手い方ではなく、弦のアンサンブルがアバウトだったりホルンの音がひっくり返ったりして荒っぽいけれど、 こういう方がかえって「ガチで戦ってるぜ」みたいな感じがしてイイ。

▼参考CD。というか、フツー聴くよな。


イングヴェイ・ヨハン・マルムスティーン
Yngwie Johann Malmsteen(1963- )
エレクトリック・ギターと
管弦楽のための協奏組曲
変ホ短調 ≪新世紀≫

イングヴェイ・ヨハン・マルムスティーン(ギター),
ヨエル・レヴィ/チェコ・フィルハーモニー管弦楽団
(キャニオン・インターナショナル,PONY CANYON PCCY-01211)

バロック組曲の形式に則った作品。「自分のルーツはバッハだ」と公言しているだけのことはある。壮麗なフランス風序曲で始まり、その後トッカータやサラバンド等の バロックではお馴染みの形式の曲が続き、楽章によっては小編成の合唱も加わる。そこに例の速弾きが入っても何の違和感も無いところが凄い。もっともバッハだって 管弦楽組曲(BWV1068等)ではヴァイオリンの超絶技巧ソロとか入れているのだから、発想としては同じわけだ。来日して新日本フィルとこの曲を演った時はアドリヴが 加わってさらに凄いことになっていた。ちなみに世の中のギター小僧はこの曲を評価しない。音楽の聴き方を知らないのだろう。


マイケル・ケイメン Michael Kamen(1948-2003)
ギター・コンチェルト
映画≪エッジ・オブ・ダークネス≫
から「核輸送列車」

布袋寅泰(ギター),
マイケル・ケイメン/ナショナル・フィルハーモニー管弦楽団
(ロンドン POCF-1001)

エリック・クラプトンが映画音楽で著名な故ケイメンに委嘱して生まれた曲。イングヴェイがバロックならこちらはロマン派。チャイコフスキーやシベリウスが 現代のイギリスに住んでいたら、こんな曲を書いたかもしれない。クラプトンがライヴ・ツアーで初演したが、CDはなぜか布袋。クラプトンのライヴ盤≪24ナイツ≫に 「核輸送列車」は収録されているが、コンチェルトは未収録。クラプトンのソロでも聴きたいものだ。ケイメンには映画音楽を素にした交響曲 (≪陽の当たる教室≫とか)などもあるが、一聴の価値あり。

上記の2枚は現在国内盤は廃盤の可能性大。イングヴェイは輸入盤が現役(来日ライヴ盤は国内盤有り)。


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2006.Same.,Fancy Free