今月のびっくりどっきりCD
(2005.3.10.)

アリゴ・ボイト Arrigo Boito(1842-1918)
歌劇≪メフィストーフェレ≫から「天上のプロローグ」
ニコライ・ギャウロフ(Bs),
レナード・バーンスタイン/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団,ウィーン国立歌劇場合唱団
cw:
リヒャルト・シュトラウス Richard Strauss(1864-1949)
楽劇≪サロメ≫から「七つのヴェールの踊り」,「終幕の場面」
5つの管弦楽伴奏歌曲

モンセラート・カバリエ(s),
レナード・バーンスタイン/フランス国立管弦楽団
(濠ユニヴァーサル/ドイツ・グラモフォン Universal Music Australia DG 476 2467)




バーンスタインの隠れた名演、復活。
亡きバーンスタインの名盤の一つにリストの≪ファウスト交響曲≫がある。ゲーテの『ファウスト』の主要登場人物3人の性格描写を それぞれの楽章で行った長大な曲だが、バーンスタインはこの作品が気に入っていたらしく2回録音していて、その内ボストン交響楽団とのグラモフォン盤は よく知られている。その初出当時LP2枚組の2枚目のB面に収録されたこのイタリアのボイトの作品は題材からみても絶妙なカップリングだった。

ボイトは作曲家としてよりも歌劇台本作家として名を成したが(ヴェルディの≪オテロ≫や≪ファルスタッフ≫の台本は彼の手による)、その残された 数少ない音楽作品の中でも歌劇≪メフィストーフェレ≫(独語ではメフィストフェレス)は発表当時はドイツ人以外による『ファウスト』物としてはかなりの 成功を収めたといわれる。その歌劇の冒頭に置かれた「天上のプロローグ」はマーラーの合唱付きの交響曲やワーグナーの楽劇の幕切れを思わせる (ボイトはワーグナー崇拝者だった)25分ほどの壮麗な序幕で、ここだけコンサート形式で演奏される事もある。 確かにこれを聴いただけでかなりお腹いっぱいで「もう本編の歌劇は聴かなくてもいいです」という気にもなってくる (大規模で上演に手間が掛かるということもありオペラの全曲録音はあまり無い)。

内容はメフィストフェレスが神に向かって「お高くとまりやがって、やんのかコラ」(笑)と喧嘩を売り、地上界でその信心深さで名の知られたファウスト博士を 自分が誑かせるかどうか賭けをしようと持ちかける場面。独唱はメフィストフェレス役のみで、他の天の声や天使は合唱団が担当する。
曲は勇壮な管弦楽の全強奏で開始され(雷鳴のSEも入る)、それを受けて彼方から響いてくるような金管のファンファーレが広大な音空間を形作り、合唱が眩いばかりの 天上界と神の栄光をこれでもかと称える。一転して滑稽で嘲笑するかのような曲調に変わりメフィストフェレス(バス独唱)が登場し天上界を皮肉る。 天の声が「お前はファウストを知っているかい?」とメフィストフェレスに問いかけると、彼はそれに応えて賭けが成立。 メフィストフェレスの退場(地上界に降りていく)と入れ替わりに少年合唱による天使の歌声が聴こえ、再び合唱と管弦楽に冒頭のフレーズが 再現し神々しいばかりに高揚して終結を迎える。

バーンスタインのこの演奏は≪ファウスト交響曲≫と並ぶ名演であるにも関わらず、収録時間の関係からかなかなか再発売の機会に恵まれていない (≪ファウスト交響曲≫がちょうどCD1枚分だったので)。このCDと同じ内容で一度ドイツプレスで再発売されたがすぐに廃盤になってしまったり、 日本では何かの特典とか応募商品にしかされずと随分ぞんざいな扱いだった。今回の盤はユニヴァーサル・ミュージックのオーストラリア・ローカルリリースだが、 今なら(2005年3月現在)外資系の量販店で手に入る。しかも税込み800円以下。自分はLPの時から聴いていて大好きな演奏だったので今回の再発は 嬉しい。そして併録のR.シュトラウス作品も聴き応え有り。特に≪サロメ≫の「七つのヴェールの踊り」の気が狂ったような追い込みは凄い。


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2005.Same.,Fancy Free